皆さんはペットボトルの蓋の代わりに取り付けて空気を送り込むことで炭酸を抜けづらくする商品を見たことがありますか?
ダイソーの「炭酸を抜逃しま栓」などがその例です。
この商品は本当に役に立つのでしょうか。高校時代に化学の授業で「ルシャトリエの原理」を習ったと思います。忘れている方も多いと思うので再確認しますが、
平衡状態にある系の状態変数(圧力や温度、濃度など)に変化を与えた時、これを緩和する方向に平衡状態が移動する
というものです。つまり炭酸飲料のペットボトルの中の二酸化炭素の圧力を高めれば、二酸化炭素の圧力を緩和するように二酸化炭素が水に溶け込む=しゅわしゅわが持続するというわけです。
もうお気づきだと思いますが、重要なのは二酸化炭素の濃度です。
ペットボトルの中がいかに空気でパンパンになろうと、二酸化炭素と水の関係にそれ以外の気体は関与しません。そして大気中に含まれる二酸化炭素濃度はおよそ0.04%です。これはつまり、2500回プッシュしたとき、ようやく1プッシュ分の二酸化炭素がペットボトルに入ることを意味します。いかに無駄なことをしているかわかりますよね。
でもブログとかにシュワシュワが長く持続するって書いてあるし!と思う方もいるかもしれません。
炭酸飲料の中では次のような平衡状態を考えられます。
つまり、空気を注入したことにより気体だけでなく水分の圧力が高まり、外に出てきづらくなることが考えられます。そのため多少は炭酸が抜けづらくなるかもしれませんが、平衡状態に達するまでの時間が長くなるだけで、最終的な平衡状態は変わりません。つまり何日か(3日程度)放置すれば炭酸は抜けます。
その点では同じくルシャトリエの原理に従って、「炭酸飲料はきちんと冷蔵庫に入れる、または早めに飲み切る」ことのほうがよっぽど重要だと思います。
炭酸飲料にせっせとポンプ…疲労に見合うだけの意味があるのでしょうか。
食べるコラーゲンや水素水なども
これに類する話でいうと「食べるコラーゲンでお肌がツルツル!」だとか、「水素水でこんな良いことが!」というのも義務教育の敗北といって良いでしょう。
コラーゲンは体内に取り込んでもほぼ全てアミノ酸に分解されてしまいますから、最初からアミノ酸が豊富な栄養満点の食事をした方がお肌にとって幾分かマシでしょう。(もちろん分解された後の一部はコラーゲンに再合成されますが。)
また水素も水への溶解度が非常に低いことで有名な気体です。そもそも水素がイオンとして大量に水に溶けていたら水素イオン濃度が上昇して危険な酸になってしまうのではないかという疑問がありますが、私は化学の専門家ではないのでこれ以上は言及しないこととします。
ただこれに関しては正しい情報がある程度普及しているようで、今年の大阪のG20で提供された「伊藤園の水素水」に対してTwitterでは「日本人として恥ずかしい」といった声も多く聞かれました。
横行するエセ科学(化学)を見抜く目を
技術で国を立てた日本国民として、こういったウソ(まがい)の化学で不当に利益を得ようとする人たちがいることが残念でなりません。しかしそれらを見抜けていない消費者も全く悪くないわけではないのもまた事実です。
今や論文や企業・大学のHPで簡単に信憑性がある情報が手に入る時代です。
今回取り上げた例についても、ググってもらえばたくさん情報が出てきます。
もちろん新しい技術には有用なものもたくさんありますから、新しいものに対して盲目的に受け入れるのではなく、「なぜ?どうして?」と本質を知ろうとする、自分なりに理解して新しい技術を取り込むことが重要だといえます。